/[リレーエッセイ] 日本の鉄道とその部材(畔津 聖)

[リレーエッセイ] 日本の鉄道とその部材(畔津 聖)

少し前、シンカリオンというアニメがあることを知りました。トランスフォーマーみたいに新幹線が変形して巨大ロボとなって活躍する、というものです。結構な人気と聞いています。小さい頃は男の子女の子問わず、乗り物に夢中になる時がありますよね。我が家の4歳の娘も特急ソニックや新幹線が好きなようで、ソニックを見つけると「ソニックだ!」と声をあげたり、新幹線の映像が出ると「これは新潟にいくやつ」とつぶやいたりしています(ちがう)。鉄道は老若男女多くの人を惹きつける魅力があります。

歴史を遡ると、日本の鉄道は明治時代のはじめにイギリスの技術をもって導入されたのがはじまりで、最初の開業区間は新橋ー横浜でした。当時は石炭をくべて走る蒸気機関で、平均速度は32km/時だったそうです。新橋から横浜は約30kmで、1時間くらいで結んでいたということですね。新橋駅においてあるSLはそういった歴史背景が理由だと聞いたことがあります。

それから様々な改良が加えられ、主な動力も蒸気機関から電気へと移行していきました。電化には、電力を発電所から運ぶ架線(電線)と、架線からモーターに電気を取り入れるための装置が必要です。その装置の名前はパンタグラフと呼ばれています。電車の屋根についているあれです(屋根についていないタイプもあります)。普段あまり気にすることはないかもしれませんね。

このパンタグラフの上には、架線と接触するための接点が付いています。この接点はすり板と呼ばれていまして、漢字にすると”摺り板”ということになるのですが、高速で移動する車両に付いて架線に摺られ続けながら電気が通る入口の役割を果たしています。天候や四季の温度変化など様々な環境の中、架線と摩擦し続けても架線をできるだけ削らず、自分もできるだけ減らず、電気も通す、といったような特性が必要になります。

はじめて日本で鉄道が電化した際、すり板に用いられた材質は黒鉛でした。しかし割れやすかったり電気抵抗が大きかったりといった課題もあり、技術革新で速度が上がるにつれ銅が主成分のものになっていきました。さらに1964年、新幹線が開業するのですが、開業当時は銅が主成分のものをつかっていまいたが、速度向上で必要になったさらなる強度等の課題から鉄が主成分のものにかわっていきました。ちなみに新幹線は当時の最高時速を110kmから210kmに100km/時向上させました。スピードがそれまでの2倍になるなんてすごいですよね。もちろん当時世界最速で、新幹線は日本の誇る技術として世界に知れ渡り、英語でもShinkansenで通じます。

黒鉛から出発したすり板ですが、いまでは銅系、鉄系、カーボン系など、いろいろな材質が各路線の条件に応じて使われています。黒鉛のものはいまでもヨーロッパでは使われているようです(ヨーロッパでは日本と違い、鉄道は郊外を走り、駅は町の中心ではなくはずれにあることが多いです。日本のように時間に正確でなかったり、パンタグラフも黒鉛のすり板が割れてもいいようなつくりになっていたりして、国の事情や環境によって求められる条件が違うということが伺えます)。

それで、そんな人目にも触れず過酷な条件でがんばっているすり板をつくっている会社のひとつが弊社という話です。エッセイということであまり計画性もなく書いていたら回りくどい紹介になってしまいました。たまに言われますがカーボン紙はつくっておりません。

日本で生まれた新幹線は、アメリカやインドでの敷設計画が進んでいます。ニュースで見かけた方もいらっしゃるかと思いますが、海外への展開も見据えた東海道新幹線の新型であるN700Sも2020年営業運転を開始する予定です。JR東日本も東京と札幌をもっと近くするための新しい新幹線を開発中です(試験車両の名前はアルファエックス。かっこいい)。いま中国勢との競争も激しいですが、日本の鉄道技術がもっともっと世界で理解され、活躍してほしいものです。

最後に、当会プラザ大分について。現在27社から成る当会ですが、私が入会したときは20社くらいだった記憶です。ここ1~2年で嬉しいことに参加企業が大きく増えました。私が入会したきっかけは現社長の勧めで、大分に帰ってきて産業界の知り合いが皆無だったので、勧められるがまま、「とりあえず行ってみて合わなければ辞めればいいか」くらいの軽い気持ちで行ったのですが、学びも多く、気がつけば月一の例会が楽しみになり、現在5年目?くらいに至ります。
比較的小さい異業種交流会になると思いますが、その分会員同士の距離感も近いような気がします。それゆえに時折遠慮のない議論が白熱することも。他の会に属したことがないので、他がどのようなものかはわかりませんが、私は当会のそういった空気感がいいなと思っています。まだまだ会員を募集しておりますので、興味のある方はぜひ事務局までお問い合わせください。

それでは次のバトンです。時代をまたぐ平成最後のエッセイになるでしょうか。ここは(株)三和プレスの横山さんにお渡しさせていただきたいと思います。お忙しいかと思いますが、よろしくお願いします。